令和元年度の業務目的

 地球温暖化研究をめぐる情勢としては、国際的には気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次評価報告書が2021年刊行に向けて準備が始まっている。この中では、第1作業部会(温暖化予測の科学的知見)と第2作業部会(温暖化への適応策)、第3作業部会(温暖化緩和策)間の連携がより一層求められている。また、気候変動抑制を目的としたパリ協定が平成27年12月に採択、平成28年11月に発効した。
 国内的には、平成27年11月に「気候変動の影響への適応計画」が閣議決定された。これを受けて、環境省により「気候変動適応情報プラットフォーム」(A-Plat)が平成28年8月に整備され、また平成29年度より3か年の計画で、環境省・農林水産省・国土交通省が連携した「地域適応コンソーシアム事業」が実施されている。この事業は地方公共団体における気候変動影響評価の実施や適応計画の策定及び実施を促進し、科学的知見を第2次気候変動影響評価に活用することを目指している。これらを受けて「気候変動適応法」が平成30年12月に施行され、全国自治体で対策策定の動きが加速している。これに伴い、国立環境研究所内に「気候変動適応センター」が設置された。気象庁・文部科学省はこれら諸活動へ提供する温暖化予測データの取りまとめを企図した「気候変動に関する懇談会」を設置した。
 このように、気候変動の影響への適応策を自治体単位で打ち出すためには、第1次情報として様々な気象要素に関する高精度で高解像度の将来予測情報が必要になる。本研究課題では、このような今後の多様な社会的要請に対応していくために以下の目標を立てて研究を進める。
 「高精度統合型モデルの開発」では、創生プログラムまでは大気モデルを用いた気候計算が中心であったが、気象・気候の様々な事象に対する海洋の影響を考慮し、大気海洋相互作用を評価できる高解像度大気・海洋結合系ベースの気候モデルへ移行する。また、新たなモデルコンポーネントを導入し物理変数の精度を向上させ、環境評価に必要な化学的気候情報が作成可能となるモデルの統合化に取り組む。また、本業務においては、将来予測実験のみならず、過去の温暖化を気候学的に検証するために、過去の大気海洋観測データと、創生プロで開発したアンサンブルデータ同化システムを発展させて、150年気候再解析を試みる。
 「汎用シナリオ整備とメカニズム解明」では、水資源・農業・健康など、多岐にわたる影響評価やリスク管理での利用に耐えうる温暖化気候データセットを「汎用シナリオ」として整備するとともに、それらデータを用いた顕著現象や極端現象の将来変化メカニズムの研究を高解像度の全球・領域大気モデルの特徴を生かして実施し、より信頼度が高く、メカニズム研究にも利用可能な気候シナリオデータセットの構築を目指す。また台風の将来変化に特化した領域大気海洋結合モデル及び雲解像モデルによる実験を実施し、メカニズムに着目しながら顕著現象の将来変化の不確実性評価に取り組む。
 「高精度気候モデル及び評価結果のアジア・太平洋諸国への展開と国際貢献」では、東南アジア・中米などを対象として、気象研究所が開発したダウンスケーリングモデルを国際的にも普及させる取り組みを行う。本領域課題においては領域テーマC、D連携の枠組みを利用して現地の影響評価研究に活用してもらう仕組みの実現も試みる。
 本課題の社会へのアウトリーチは、国内的には、当プログラムの領域テーマD「統合的ハザード予測」、気候変動技術社会実装プログラム(SI-CAT)等との連携、また気象庁「地球温暖化予測情報」、環境省「気候変動適応情報プラットフォーム」等を活用し社会への情報提供を行う。また国際的には、IPCCへの貢献を行うとともに、結合モデル相互比較計画(CMIP)や統合的地域ダウンスケーリング研究計画(CORDEX)-アジアなどの国際共同研究へ積極的に参加する。これにより、本研究の計算・解析結果が各国の「地球温暖化予測情報」に反映されるとともに、東南アジア諸国・中米等との連携を通じた現地気候研究者の人材養成を行うことにより、我が国発の気候モデルがアジア地域における事実上のデファクト・スタンダードとなることを目指す。
 以上の目的のため、本事業では以下の研究課題を実施する。
領域課題(i)「高精度統合型モデルの開発」
領域課題(ii)「汎用シナリオ整備とメカニズム解明」
 サブ課題a「汎用シナリオ整備と顕著現象変化メカニズム解明」
 サブ課題b「台風等極端事象の高解像度ダウンスケーリングシミュレーション」
領域課題(iii)「高精度気候モデル及び評価結果のアジア・太平洋諸国への展開と国際貢献」 pagetop

令和元年度の成果目標及び業務方法

領域課題(i)「高精度統合型モデルの開発」

(目標)
温暖化研究及び影響評価・適応研究に有用な中長期気候予測プロダクト生成のため、結合過程を含むことで予測精度の向上が期待される新タイムスライス実験システムを試験運用し、既存システム出力と比較しながら、出力の評価を行う。また、新しい大気モデルを含む統合モデルの開発を継続して進める。

(業務の方法)
新タイムスライス実験システムを稼動させ、既存の日本領域モデルを使用した力学的ダウンスケーリングまでを試験実行する。過去気候を対象とした実験から、特に結合過程の導入に着目して、気候再現性の良否を確認する。また、将来気候の外部条件を与えた実験を行い、台風などの顕著現象の将来変化について表現が既存のものとどのように変わるか確認する。新しく開発した大気モデルを含む統合型モデルを短期的に積分して、降水分布や台風生成、発達、消滅などの再現性を高めるための調整を行う。日本領域大気モデルを海洋モデルと結合させた実験を行い、日本および日本周辺気候を再現への効果を調べる。気温と降水量以外のプロダクト生成の可能性を高めるために、放射などに見られるバイアスの成因を調査してその低減を図る。並行して、新しい領域モデルの導入のための作業を行う。150年気候再解析のためのアンサンブルカルマンフィルタに基づくデータ同化システム開発では数十年程度の気候再解析予備実験を行い、疎な観測分布の下での同化スキームの振舞いを調査する。

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領域課題(ii)「汎用シナリオ整備とメカニズム解明」

 サブ課題a.汎用シナリオ整備と顕著現象変化メカニズム解明

(目標)
顕著現象将来変化に関して大気海洋結合変動等を含めた要因分析と気候シナリオ実験を行う。

(業務の方法)
全球大気モデル温暖化実験における日本を含む北西太平洋域の降水・循環応答の要因と特性を理解するとともに、結合効果を取り入れた温暖化実験を引き続き行い、北西太平洋域の気候変化予測における結合効果の影響を調査する。また、全球・領域気候モデルにおける極端な降水現象の将来変化のメカニズムについて、力学的・熱力学的過程の寄与などを調べる。全球・領域モデルの双方を用いた多数例アンサンブル実験(d4PDF)の延長実験を継続するとともに、近年に発生した顕著現象のイベントアトリビューション研究を、領域テーマAと協力して行う。気象研究所が整備する温暖化予測データセットのCMIP5マルチモデルアンサンブル内での位置付けについて、主に極端事象に着目し、不確実性の幅の定量化を行う。全球・領域気候モデルを用いた力学的ダウンスケーリングによる現在・将来気候実験を継続して実施する。気候の漸進的な変化の調査のために、中解像度150年連続実験を引き続き行う。第2年度に実施した実験結果を評価し、順次、領域テーマDへ提供する。必要に応じ、他の研究プロジェクトにも実験結果提供を行う。

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 サブ課題b.台風等極端事象の高解像度ダウンスケーリングシミュレーション

(目標)
雲解像モデル及び領域大気海洋結合モデルを用いた台風のシミュレーション実験により、台風の強度とそれに伴う日本域の雨量と降水強度の将来変化推定を実施する。

(業務の方法)
前年度に引き続き、観測された顕著な台風についての再現実験を行い、強度及び日本域における雨量の再現性を検証するとともに、台風に伴う豪雨の発生プロセスとメカニズムを調べ、温暖化気候の環境場を与える擬似温暖化実験などにより雨の将来変化予測を実施する。今年度は、前年度に実施した顕著台風とは移動速度などの特性が異なる顕著台風を対象とする。また、温暖化に伴う台風の強度及び中緯度の降水強度・降水量の将来変化を推定するために、d4PDFや全球モデルの台風の力学的ダウンスケーリング実験を昨年度分にさらに追加して実施する。

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領域課題(iii)「高精度気候モデル及び評価結果のアジア・太平洋諸国への展開と国際貢献」

(目標)
海外を対象として高分解能気候モデルによる温暖化予測実験を行う。

(業務の方法)
東南アジアにおける地域気候モデル国際比較実験(CORDEX-SEA)の参加国から招聘を行い、その招聘研究者に気象研究所非静力学地域気候モデル(NHRCM)の使い方の指導を行う。前年度までは、タイ、フィリピン、ベトナム、マレーシア全域で5km分解能のNHRCMを用い、気候変動予測実験を行ったが、インドネシアに関してはまだごく一部の狭い領域で行ったのみである。インドネシアは、計算領域が広いため全域で計算することは困難である。そこで、今年度は、インドネシアにおける気候シナリオ作成方法について検討を行い、その計算を開始する。また、CORDEX-SEAで指摘されている脆弱地域においては、これまで2km分解能のNHRCMを用いて、フィリピンミンダナオ島とタイメコン川流域で現在気候再現実験及び将来予測実験を行ってきたが、今年度はそれ以外の1か所で2km分解能の気候シナリオの作成を行う。NHRCMによって計算された東南アジアにおける現在気候再現実験結果の影響評価研究への適用方法についての検討を領域テーマDと連携をとりながら行う。高解像度モデル相互比較プロジェクト(HighResMIP)に参加するため20km解像度の全球大気モデルを用いた現在気候再現実験が前年度で終了したので、今年度は将来気候予測実験を行う。前年度までにCORDEX-EAに参加するためにNHRCMを用いて現在気候再現実験を行ってきたが、再現性が良好であることが確認されたため、今年度は21世紀末の将来気候予測実験を行う。


業務の遂行に当たっては、研究連絡会を開き各課題間の連携を確認するとともに、外部有識者等からなる研究運営委員会で得られた全体の研究課題に対する意見や示唆により研究の方向性を確認・修正する。国内外の関連会合に参加して情報交換を行うほか、成果の進捗状況の把握及び情報発信に努めることで業務の効率的・効果的な運用を図る。さらに、より成果を社会実装に近づけるために、気候変動の将来予測等に関する種々の科学的知見をアピールする場や取りまとめる場(国際会議や国内検討会等)など、本業務での研究活動を打ち込む機会を適宜活用しながら、アウトリーチ活動に取り組む。領域テーマDとの連携を図るためのC/D連携研究会を共催し、また本課題成果の温暖化研究への有効活用を目指して国内外の各種温暖化適応研究プロジェクトとの連携を図る。政府の各種取り組みのうち、文部科学省・気象庁で立ち上げた「気候変動に関する懇談会」、環境省が国立環境研究所内に設立した「気候変動適応センター」の各種取り組みに協力する。

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令和元年度の結果

領域課題(i)「高精度統合型モデルの開発」

 気候変動による社会・経済活動への影響に対する効果的な適応策の策定に必要な気候情報には、高精度化はもとより、多彩な影響評価対象に有用となるように、その多様化が求められる。多様な気候情報の提供を実現するためには、共生、革新、創生プロの15年来の地球温暖化研究で使用されてきた気候モデルの各コンポーネントの更新が必要であり、さらに新しい物理・化学プロセスを導入した統合的モデルの開発が必要である。
 当領域課題の従前研究では、高解像度の全球・日本域大気モデルを使用した将来気候のタイムスライス実験を行い、台風、梅雨、大雨の再現と予測について成果を挙げてきた。現行モデルを活用した研究の集大成は、大規模将来アンサンブル予測データベース「地球温暖化対策に資するアンサンブル気候予測データベース:d4PDF」の完成への貢献で結実した。この大気の顕著現象の確率的理解を高めるデータベースは、幅広い利用者の利益に結びつくことが期待される一方で、多くの課題が認識されている。つまり、気候モデルの再現・予測精度や解像度を向上させるという継続的研究課題はもとより、気温や降水量以外のモデル出力についても利用者を満足させる程度の品質を実現する必要がある。
 本領域課題では、まず、従来の高解像度大気モデルを用いたタイムスライス実験から、大気海洋結合モデルを活用する実験形態に移行しながら、モデルによる再現気候値の改善を図る。全球大気モデルでは、現行最大解像度20km から更に高解像度化を進めた際の計算効率の低下となる 技術的課題と力学フレームの高度化の課題に取り組む。また、高解像度化した全球・領域大気モデルに適合し、気温・降水量以外の物理量の精度を高めるため、各種物理過程の改良を行い、化学物質輸送モデルなどを新たに採用する。エアロゾルなどの将来の大気環境変化を推定した化学的気候情報は、大気汚染対策等に有効と考える。これまでの研究の主眼は将来予測に重心が置かれてきたが、気候研究及び影響評価研究のいずれにおいても、過去に起った事例について検証を行い、我々の気候変動に関わる見識を高めておく必要がある。過去150年間を対象とた長期気候再解析の実現に向けたデータ同化スキームの開発・研究を進める。また、新しいスキームで初期値化された気候モデルによる気候予測実験を行い、影響評価・適応研究に有用な将来中長期予測プロダクトの生成を試みる。

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領域課題(ii)「汎用シナリオ整備とメカニズム解明」

サブ課題(a)「汎用シナリオ整備と顕著現象変化メカニズム解明」

 日本付近の夏季の平均降水量の将来変化は、6 月は、現在の梅雨降水帯のピーク付近から南側で降水量が増加している。日本付近では有意ではないが若干減少している。これらは梅雨降水帯の季節的な北上の遅れを示唆する。その一方、この傾向は梅雨期後半の7月及び8月では不明瞭である。この背景となるメカニズムについて特に初夏( 6月)とその後(7月、8月)の違いに着目してモデル感度実験により調査した。6月はSST一様昇温及び熱帯SSTパターン変化の影響が大きいのに対して、7 月と8 月は陸面昇温や北半球中高緯度SST パターン変化の影響が大きいことを示した。
 地球温暖化に伴う極端な降水の変化については、頻度の小さい降水ほど増加率が大きい要因を、低頻度事象の解析で有効性を発揮する大アンサンブル実験、地球温暖化対策に資するアンサンブル気候予測データベース(d4PDF)を用いて、極端降水量を気温と鉛直速度の鉛直プロファ イルのみで近似する手法(O'Gorman and Schneider 2009: Pfahl et al. 2017)により熱力学的寄与と力学的寄与に分離し、それぞれの性質を調べた。熱力学的寄与は全球一様で、Clausius-Clapeyron(C-C)式の増加率に対応しているが、力学的寄与は熱帯域の空間パターンを決めるのに寄与している。年最大日降水量についての力学的寄与は3%程度の増加で、あまり大きくないが、100年最大6 時間降水量で見ると15%以上の増加の寄与がある。力学的寄与は、地上付近から600hPa 付近にかけてほぼ一定量の増加が見られる。
 台風の移動速度が遅いと、ある地点で見ると、台風の影響を受ける時間が長くなり、災害が発生しやすくなる。地球温暖化に伴う台風の移動速度の将来変化を調査したところ、現時点を越える政策的な緩和策を講じない場合、今世紀末には、日本の位置する中緯度を通過する台風(熱帯低気圧)の移動速度が約10%遅くなることがわかった。このことは、地球温暖化が進むと、台風が日本付近に接近した際に、その影響を受ける時間が長くなることを意味する。
 領域テーマA との連携のもと、d4PDF のAGCM(水平約60km 格子)及び地域気候モデル(水平約20km格子)による高解像度の巨大アンサンブルデータを組み合わせて解析することで、これまで難しいとされてきた日本の地域的な大雨事例に対するイベント・アトリビューション(EA)を実施した。事例として、2017年7 月の九州北部豪雨、2018年7 月の瀬戸内地方を中心とする豪雨及び1993年に複数の台風の通過によってもたらされた九州東部の豪雨を取り上げた。
 統合的気候モデル高度化研究プログラムと並行して実施された気候変動適応技術社会実装プログラム(SI-CAT)では、中部山岳域を対象に格子間隔1km の領域気候モデルを用いた計算がなされた。SI-CATの計算結果を用いて、豪雪年と少雪年における北アルプスの降雪・積雪の将来変化を調査した。地球温暖化が進んだ場合、北アルプスの高標高域では、豪雪年は現在よりも多くの雪が厳冬期に降り、現在に匹敵するほどの積雪となる一方、少雪年は現在よりも大きく積雪や降雪量が減少することが分かった。つまり、将来の北アルプスの積雪は、豪雪と少雪に極端化されることが懸念される。
 1980年以降の日本周辺の気温及び海面水温の変化に着目し、近年の気温上昇が平成30年7月豪雨に及ぼしうる影響を非静力学地域気候モデル(NHRCM)(Sasaki et al.2008)を用いて評価した。この豪雨イベント総降水量は温暖化実験と非温暖化実験で、平均で約6.7%の差が生じていた。この数値は初期値の違いによっても異なるが、与えた気温トレンドの違いによる影響が大きく、2.7~10.7%程度のばらつきがあった。感度実験で用いた気温トレンドと降水量の変化との関係から、総降水量は下層の気温と水蒸気量の変化だけでなく、相当温位の鉛直プロファイルの変化にも影響を受けていたことが分かった。
 上述の平成30年7 月豪雨の時と同様の手法を用いて、近年の気温上昇が令和元年台風第19号の大雨に及ぼした影響を評価した。温暖化実験は非温暖化実験に比べて、広範囲で降水量が多く、気温上昇に伴う降水量の増加( 3 ~ 5 %程度)がみられた。
 大規模アンサンブルデータd4PDF の6000年積分を解析することで、100年に1 度より低頻度の極端降水について、極値統計による推定を使わずに直接、将来変化を調査した。その結果、関東の降水は地球温暖化によってより極端なものほどより強化することが示唆された。クラスター解析により豪雨時の循環場を4つに分類すると、関東で極端降水が生じる際は低気圧システムに伴うものが過半数だが、北側に高気圧偏差が卓越する状況下での極端降水は、地球温暖化によって増加することが示唆された。熱帯低気圧のような強い低気圧に伴う極端降水の場合は循環場の強化が示唆されるが、それ以外の状況下では低気圧循環はむしろ弱化するため、気候平均的な水蒸気増加が極端降水の強化に重要であると考えられる。強い熱帯低気圧が温暖化により増加することで熱帯低気圧性の極端降水は強化する。
 1950年から2100年の150年間を連続してMRI-AGCM を実行し、NHRCM により各年9 月~翌年8 月までの期間をダウンスケールして計算を行った。RCP シナリオはRCP2.6、RCP4.5、RCP6.0、RCP8.5の4 種類を用いている。150年間の日本の陸上の年間降水量はほぼ横ばいで、どのシナリオにおいても降水量の増減がみられなかった。一方、年最大日降水量は徐々に強くなっているが、気温の上昇量で割ると3 %/K ~ 5 %/K 程度であり、既往の研究で報告されているような、気温上昇1 度当たり、強い降水が6 %~ 7 %強化されるというClausius-Clapeyronの関係と比べ、やや小さい強化率となっている。この強化率が小さい原因については今後調査を行う。
 Inter-Sectoral Impact Model Intercomparison Project(ISIMIP)とCoordinated Regional ClimateDownscaling Experiment(CORDEX)サブセットが、それぞれのサブセットのモデル選択数を変更した際に、そのカバー率がどのように変化するのかについて明らかにした。ISIMIP サブセットは気温の将来変化で不確実性を広くカバーする一方、降水量の将来変化については広くカバーできず、全球で統一したモデルサブセットを使う際のデメリットを示した。降水量の不確実性のカバー率については、もし他とは異なる大きな変化率を示すモデルがアンサンブル内にある場合、そのモデルを選択するかしないかでカバー率は大きく変化する。気温の不確実性のカバー率については、モデル選択によってその不確実性の幅にあまり影響はなく、各モデルの変化量が類似している。
 気象研究所全球大気モデルMRI-AGCM3.2で作成された気候情報を使って、昨年度は陸域平均降水量を対象にその現在気候値の再現精度及び将来変化の地域特性を調査した。今年度は引き続き、極端降水事象を対象に調査した。MRI-AGCM3.2で作成された各メンバーは、本研究で対象とした4 つの極端降水指標について、その量でも空間分布でも現在気候値をよく再現することが分かった。SREX の26領域を用いた結果からも、CMIP5の各モデル、またマルチモデル平均と比べても多くの地域でその再現性は良い。将来変化については、全球及び全球陸域でその変化は相対的に大きい。CMIP5と比べて将来変化が大きい地域はアフリカ北部と中央アジアから東アジアに広がり、極端指標によっては、北米や南米でもその傾向は見られる。将来気候への変化傾向は、フィリピン沖やオーストラリアの一部でAGCM60(AGCM20)とCMIP5との間で不一致となり、それ以外のほとんどの地域では一致していた。
 NHRCM の境界条件を与える全球20km モデルの東アジアの平均降水量と季節平均気圧配置の将来変化がCMIP5モデルアンサンブルの中で、どのように位置づけられるかを調査した。夏季平均降水量の日本付近の領域(JPN)平均では、RCP8.5シナリオにおいて、全球20km モデルとCMIP5多数モデルはともに増加傾向を予測するが、全球20km モデル平均の増加率は、CMIP5モデル平均に比べて大幅に小さくCMIP5モデル群の10パーセンタイル値を下回る。全球20km モデ ルとCMIP5モデルの予測ばらつきは大きく、減少傾向を予測するメンバー(モデル)もある。冬季平均降水量のJPN 平均では、両シナリオにおいて、全球20km モデル平均とCMIP5モデル平均ではともに、降水量変化に明瞭な傾向は見られなかった。
 季節平均海面気圧については、全球20km モデル予測の平均とメンバーはCMIP5多数モデルによる予測の集団の中におおむね含まれている。冬季は、アリューシャン低気圧は北偏し東方海上から日本の南東に高気圧偏差が広がるため、冬型の気圧配置は弱まり日本域では南風偏差となる。一方、夏季は、夏の太平洋高気圧の北日本への張り出しは弱くなり、日本の南方海上では強まる傾向であるため、日本域では西風偏差となる。不確実性は大きい。

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サブ課題(b)「台風等極端事象の高解像度ダウンスケーリングシミュレーション」

 平成30年(2018年)、関西国際空港をはじめとする西日本から東海地方にかけて広い範囲に大 きな被害をもたらした台風第21号(Typhoon Jebi)に続き、令和元年(2019年)も関東に上陸し た台風第15号(Typhoon Faxai)や、関東にかつてない豪雨をもたらした台風第19号(Typhoon Hagibis)等、日本は今なお毎年のように台風の脅威にさらされ続けている。本研究はそのような 極端事象をもたらす台風を対象に大気雲解像モデル(Cloud Resolving Storm Simulator, CReSS) 及び領域大気海洋結合モデル(CReSS-NHOES)を用いた高解像度シミュレーションを行い、台風や台風に伴う降水システムの詳細な構造や物理プロセスを明らかにした上で、力学的ダウンス ケーリング実験や擬似温暖化実験により、地球温暖化による台風や台風に伴う雨の将来変化とそれらに対する大気海洋相互作用の効果を推定することを目的とする。
 地球温暖化による台風の強度及び中緯度の降水強度・降水量の将来変化を推定するため、本研究では、おもに全球モデルの台風の力学的ダウンスケーリング実験と擬似温暖化実験の2本立てで取り組んでいる。前者としては、「地球温暖化対策に資するアンサンブル気候予測データベー ス、database for Policy Decision making for Future climate change (d4PDF)」からのダウンスケーリング実験を平成30年度~令和元年度の2年計画で実施した。日本に大きな影響を及ぼす台風として、特に日本の東海上を北上して北海道東部に上陸する台風に注目した。全球大気60km モデル (AGCM60)による3000年分の過去実験(HPB 実験)と5400年分の4℃上昇実験(4K実験)から、それぞれ98例及び125例ずつと100例前後の事例を抽出した。これら抽出事例すべてについて水平解像度4kmのCReSS によるダウンスケーリング実験(CReSS04)を実施した。AGCM60は全球大気モデル実験だが、CReSS04では一次元スラブ海洋モデルにより台風に伴う海面水温低下の影響を考慮している。該当台風の北緯30度~北緯46度間の最大強度や最大強度到達緯度等の将来変化を調査したところ、CReSS04では最大強度が増加し、より強い台風がより高緯度まで達する傾向がみられたものの、最大強度到達緯度に北上傾向はみられなかった。これら日本の東海上を北上する中緯度台風は、小さな眼の周辺に強い風雨を伴い、かつ軸対称構造を保ったコンパクトな平均構造を持っていた。温暖化気候下、日本付近では傾圧性が低下するとともに海面水温が 3℃~ 5℃上昇する。そのため、現在気候下では非軸対称構造を強め強風域を拡大する温帯低気圧化が、温暖化気候下では遅延した可能性が示唆された(Kanada et al. 2020)。
 次に、2016年8 月後半に関東以北の太平洋側を中心に大雨をもたらした3 つの台風事例についてCReSS-NHOES による擬似温暖化実験を実施した。その結果、温暖化気候下、すべての事例で 台風の強度が増すこと、また、台風に伴う北海道東部の雨について強雨頻度の割合が増加することが明らかになった。また、台風の通過に伴う直接雨については、すべての事例で雨量の増加傾向がみられた。台風が、北緯40度以南と離れている遠隔雨の期間、北海道東部に降雨をもたらす 降水システムは、融解層より上に弱い上昇気流と雪が広がった層状性降水システムであった。一 方、温暖化気候下では海面水温の上昇とともに下層水蒸気量が増加し、対流有効位置エネルギー (convective available potential energy)が増加する。その結果、背の高く強い上昇気流が発達し、 霰生成がより活発な対流システム化し、局所的な強雨をもたらすようになっていた。一方、台風 の通過に伴う直接雨ではさらに台風の二次循環の強化が加わり、降水の強さ・量ともに増加する という温暖化による台風に伴う雨の強化メカニズムを明らかにした(Kanada et al. 2019)。
 中緯度顕著台風の代表例として、昨年度実施した2017年台風シーズン最強のスーパータイフーン・Typhoon Lan に続き、本年度は2018年の顕著台風Typhoon Trami(2018)を対象に、領域大気海洋結合モデルCReSS-NHOES(実験名:3dO)、一次元スラブ海洋モデルを結合したCReSS(1dO)及び海面水温を固定したCReSS(FO)による再現実験を行った。Typhoon Trami(2018)は、Typhoon Lan(2017)と台風の経路及び強度は類似するも、移動速度が極めて遅いという異なる特徴をもっていた。移動速度が比較的速いTyphoon Lan(2017)では、3dO と1dO で台風の強度や風雨の分布に大きな差異はみられなかった。しかし、移動速度が非常に遅いTyphoon Trami (2018)では、3dO と1dO で台風の強度や台風中心付近の風雨の分布に大きな差異がみられ、3dO でのみTyphoon Trami(2018)の発達の停滞傾向や特徴の一つである巨大な眼を再現することができた。移動速度が遅いTyphoon Trami(2018)においては、最大風速半径付近といった強風域で海面水温低下する1dO に対し、3dO では最大風速半径付近とその内側により顕著な海面水温の低下がみられた。移動速度が遅い台風事例では、湧昇といった3次元海洋モデルでのみ表現される海面水温低下のメカニズムが台風の発達や構造に大きなインパクトを持つことが示された。

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領域課題(ⅲ)「高精度気候モデル及び評価結果のアジア・太平洋諸国への展開と国際貢献」

 領域課題(ⅲ)は大きく2 つのテーマからなっている。一つは、アジア・太平洋諸国において温暖化による詳細な気候変動予測を行うことである。アジア・太平洋諸国から研究者を招聘し て、それぞれの国において気象研究所全球大気大循環モデル(MRI-AGCM)によって計算された気候変動予測の結果を、気象研究所非静力学地域気候モデル(NHRCM)で、2 ~5km の解像度に力学的ダウンスケーリングを行う。この実験は、影響評価研究者が利用しやすいよう、実験設定段階からテーマDと緊密な連携をとりながら行った。計算結果は、テーマD及び各国の影響評価研究者に渡され利用されるとともに、各国に持ち帰った後さらに詳しい解析がなされる。また 東南アジア域における地域気候モデルによるダウンスケーリング結果の比較を行う国際プロジェクトである東南アジアにおける地域気候モデル国際比較実験(CORDEX-SEA)にもそのデータは提出される予定である。本年度はまず、ベトナム中部における2km分解能のNHRCMによる現在及び将来気候実験を行った。2km 分解能の現在気候実験における年降水量については、5km 分解能の実験と比べて、急峻な山岳の多いベトナム中部の地形性降水が良く再現されていた。温暖化による降水量の変化については、年降水量では概ね20~40%の増加を示した。冬季はベトナム中部のほぼ全域で降水量が増加したが、夏季は北よりの地方での減少が見られた。この地方は夏季においては山岳の風下に当たるため、フェーン現象がこの結果に影響しているものと考えられる。次に、マレーシア(マレー半島部)における2km 解像度のNHRCM による現在及び将来気候実験を行った。西部と東部に分けて月降水量の時間変化を調べたところ、西部では4 月と11月の降水量の極大が現在気候実験において再現されていた。過小評価ではあるものの、東部においても12月の降水量の極大が現在気候実験で再現された。降水量の将来変化については、冬季及び夏季モンスーンの影響が現れており、前者では西部・南部で20~30%の増加、後者では西部で25~ 40%の増加が予測された。秋季においては、東部の沿岸域で30~40%の増加という結果になった。なお、春季においては目立った変化は現れなかった。さらに、インドネシアにおいて5km 格子のNHRCMによる現在及び将来気候実験を実施した。計算領域が広いため、今年度は現在・将来それぞれについて10年分の実験を行った。来年度にそれぞれ残りの10年分についての実験を実施し、現在・将来それぞれ20年分のデータセットを揃える予定である。以下は従来の半分の期間 のデータを使用したという意味で予備的な結果ではあるが報告する。現在気候実験においては、 NHRCM で再現された降水量は概ね観測を基にした格子データ(APHRODITE)と整合的であった。ただ、5km 格子のNHRCM を使ったため、山岳に起因する降水などAPHRODITE よりも空間的に細かい降水分布が得られた。降水量の将来変化については、計算領域全域で平均した季節降水量の確率密度関数から、将来の冬季において平均値のみならず分散も大きくなることが示唆された。20年のデータが揃った段階でも、このことが言えるのか興味のあるところであり、今後の解析が期待される。
 もう一つのテーマは、温暖化予測実験の結果を国際的に比較するプロジェクトに参加し、気象研究所のモデルの特徴を知り、更なるモデルの高度化を目指すことである。高解像度モデル相互比較プロジェクト(HighResMIP)では、今年度は将来気候実験を2099年まで完了させた。現在、データの提出の作業を行っているところである。また、東アジア域における地域気候モデルによるダウンスケーリング結果を比較するCORDEX-EA においては、20km 格子のNHRCM を用いたERA-Interim からのダウンスケーリングが行われた。また、60km 分解能のMRI-AGCM からのダウンスケーリングも実施され、過去実験及び将来実験(RCP8.5, RCP2.6)が完了した。これらのデータは釜山科学技術大学経由で提供されることになっている。

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Abstract

Area Theme C: Integrated Climate Change Projection

Japan Meteorological Business Support Center: Izuru Takayabu

 TOUGOU-C's targets are, (1) arranging the synthesized climate change projection data around Japan and Asian countries, and (2) preparing a high accuracy, local scale climate change data, especially of extreme events.
 Internationally, the process of writing the 6th assessment report (AR6) of IPCC WGI has already started. It is planned to be published in 2021. In AR6, handshaking among WGI (aims to assess the physical science basis), WGII (assesses the vulnerability, socio-economic and natural systems), and WGIII (focuses on climate change mitigation) is strongly recommended.
 In Japan, establishing the climate adaptation plan is an urgent issue. Cabinet has decided "National Plan for Adaptation to the impacts of Climate Change" in November 2015. Following this decision, MOE has started the action of A-PLAT (Climate Change Adaptation Platform) in August 2016, where many local scale climate change information appeared. Finally, "Climate Change Adaptation Act" has been promulgated on June 2018, and come into force on 1 December 2018. The purpose of this Act is to promote Climate Change Adaptation through establishing necessary measures such as formulating plans for Climate Change Adaptation and providing information on the Climate Change Impact and Climate Change Adaptation, thereby contributing to the health and cultural life of the Japanese people both at the present and in the future in recognition of the impact that global warming and other climate change has on daily life, society, economics, and the natural environment, and the risk that this impact will increase over the long term. In order to promote a policy for Climate Change Adaptation comprehensively and systematically, the government shall establish a plan for Climate Change Adaptation. And our program has to prepare a national climate change scenario for that purpose. (Act on Promotion of Global Warming Counter-measures (Act No. 117 of 1998))
 MOE set up CCCA (Center for Climate Change Adaptation) in NIES, and it starts to promote adaptation and research related to climate change adaptation in the local government. To promote these activities, high resolution, high accuracy climate change projection data is needed.
 Figure 1 indicates the role of Theme-C in the whole activity in translating/using the climate change data. To bridge between the CMIP products and the impact studies, our mission, to downscale the global climate model data into a local scale, is an indispensable process.
 Figure 2 indicates the flow chart for producing national climate change scenario. We expect five-year cycle of producing valuable data for making county base climate adaptation plan. We need to project more accurate and less uncertain information of climate change in local scale to distribute valuable data for this cycle.
 For this purpose, we have designed our project as shown in Fig. 3. We have three sub-programs in it, and many co-workings or relations have been established with many domestic and international climate change projects or activities.


Fig.1 Schematic representation of Theme C in the whole project activities


Fig.2 The flow chart of making national climate change scenario


Fig.3 The role of the project of theme C

Sub-theme (i): Development of high-precision models integrated with climate- relevant processes

Japan Meteorological Business Support Center: Masayoshi Ishii

 For further improvement of future-projection products used for climate change adaptation and mitigation, we are developing global and regional coupled models of high resolution based on the present earth system model of the Meteorological Research Institute of the Japan Meteorological Agency. So far, we conducted time-slice experiments with high-resolution atmospheric models for future changes in extreme weather and climate events such as typhoon and strong precipitation. The former versions of the same model have been used under consecutive domestic global-warming research programs called KYOSEI, KAKUSHIN, and SOUSEI. The model performances are still the best among atmospheric models used for global warming studies world-wide. However, the models do not include air-sea coupling processes, and they produce atmospheric states only. That is why we introduce coupled models for conducting future projections with time-slice experiments. Such coupled experiments provide us more physically consistent products than ever and these should be informative to understand future climate changes in extreme events as well as mean states. We also plan to examine possibility of atmospheric chemistry products by introducing chemistry models including complicated chemical processes and transportation. These physical and chemical products will hopefully respond to various social demands.
 Needless to say, understanding past climates for more than 100 years is as important as predicting future climates in the next 100 years. At present, the past climates are poorly known particularly before the International Geophysical Year (1958-59). In the past, we experienced big typhoons landed on Japan and severe disasters such as flood and drought. It is beneficial to modelling and climate predictions to understand how and why these events occurred as a result of long-term climate fluctuations. Therefore, a study for 150-year climate reanalysis is incorporated in this sub-theme. Here, we will develop a system of long-term data assimilation with sparse observations.

Sub-theme (ii): Development of climate scenarios for multi-stakeholder applications and understanding the mechanisms of climate change

a: Development of climate scenarios for multi-stakeholder applications and understanding the mechanisms of future changes in extreme events

Japan Meteorological Business Support Center: Toshiyuki Nakaegawa

In sub-theme (ii) Development of climate scenarios for multi-stakeholder applications and understanding the mechanisms of climate change, we develop a set of future climate projection under a changing climate with high horizontal resolution of atmospheric global and regional climate models with high reliability so that it is widely used for impact assessments and risk managements for water resources, agriculture, and health sectors and for the mechanism research on future changes in climate extremes. Moreover, intensive experiments on future changes in typhoons are performed with atmosphere-ocean coupled regional model and uncertainty in future climate projection of typhoons is tackled from the viewpoint of the mechanisms. In this fiscal year, following research topics are investigated.
 Climatological mean precipitation in East Asia or Japan is influenced by future changes in surface air temperature in the Eurasian Continent as well as by those of sea surface temperatures (SSTs) as revealed in the last fiscal year. One-hundred-fifty-year simulations show no long-term trend in climatological mean precipitation which cannot be seen in our time-sliced 20-year simulations. On the other hand, the simulations have an increasing trend in extreme precipitation. Future changes in extreme precipitation is examined with the database for policy decision making for future climate change (d4PDF). Future changes in extreme precipitation is decomposed into thermodynamic effect (Clausius-Clapeyron relation) and dynamical effect (circulation field) and these two contributions to the future changes are analyzed. Pseudo-non-global-warming approach shows that water vapor field and vertical atmospheric stability enhance and reduce, respectively, future changes in extreme precipitation, suggesting that the balance between the two determines the changes in extreme precipitation.
 Typhoons influencing climates in Japan are also investigated with different approaches. Pseudo-global-warming approach applies to Typhoon Hagibis devastating Japanese archipelago in October 2019. This analysis reveals the current global warming increases total precipitation of Typhoon Hagibis by 3% to 5%. Typhoons attacking Japanese archipelago in recent years also have stronger maximum wind speeds and/or more precipitation amount due to the current global warming. In addition, typhoon translation speed in mid latitudes around Japan is projected to reduce in a future warming climate simulated in d4PDF. Dynamical downscaling with cloud-resolving regional model reveals the enhancement of the minimum central pressure.
 The fundamental future climate projection with the atmospheric global climate model with 20-km grid spacing and with the atmospheric regional climate model with 5-km and 2-km grid spacing in Japan are steadily performed. These results from the atmospheric global climate model are assessed by comparing the CMIP5 multi-model ensembles. The 150-year simulations with the atmospheric global climate model with 60-km grid spacing and with the atmospheric regional climate model with 20-km spacing in Japan are also performed with 4 RCP scenarios under the convention of High Resolution Model Intercomparison Project to evaluate transient climate changes.

b: High-resolution simulation of typhoons and extreme events

Nagoya University: Kazuhisa Tsuboki

The purpose of the present study is a future change projection of typhoon intensity and precipitation intensity/amount in the mid-latitude with the climate change. Using a cloud-resolving model and a regional atmosphere-ocean coupled model, dynamical downscaling experiments of d4PDF typhoons, pseudo-global warming experiments, and simulation experiments of observed intense typhoons were performed.
 To understand the impacts of global warming on tropical cyclones (TCs) in midlatitude regions, typhoons that traveled over the sea east of Japan were selected from the current climate (98 cases) and 4K-increased climate (125 cases) of d4PDF, and dynamical downscaling experiments were performed using the 4-km-mesh cloud-resolving model with a one-dimensional slab ocean model. The results show that the maximum intensity of typhoon increases and higher intensity reaches higher latitude while no significant northward migration of the maximum intensity latitude was found. The baroclinicity around Japan is weakened with the climate change and the SST increases 3~ 5℃. As a result, an extra-tropical transition is delayed and the axisymmetric structure tends to be maintained during northward moving.
 Pseudo-global warming experiments using the coupled model were performed for the three typhoons that caused heavy rainfall over the northern Japan in late August 2016. In the all cases, the typhoon intensity increased under the future warmer climate. The ratio of frequency of intense rainfall in the eastern Hokkaido also increased. The rainfall amount associated with landfall increased for all typhoons, owing the intensification of the secondary circulation of typhoon.
 Using the cloud-resolving model and the coupled model, simulation experiments of Typhoon Trami (2018) were performed. Since Trami moved very slowly, the difference between these models was significant and only the coupled model simulated the characteristic large eye and slow movement of Trami. This indicates that the coupled model is necessary to simulate the characteristics of slow-moving typhoons, because SST changes due to three-dimensional motion of sea water could have a considerable impact on the development and structure of typhoon.

Sub-theme (iii): Advancing international collaboration through the application of a high-performing climate model over many countries in the Asia-Pacific region

Japan Meteorological Business Support Center: Akihiko Murata

1) Climate change projection in vulnerable areas

 Four researchers were invited to MRI from SE-Asian Countries in order to conduct collaborative researches on climate change projection around their homelands in FY2019. First, the non-hydrostatic regional climate model (NHRCM) was used to simulate present and future climate in the central part of Vietnam with a grid spacing of 2 km. Generally, the spatial distribution of orographically induced precipitation is well reproduced by the model with 2-km grid spacing when compared with that produced by 5-km grid spacing. In the future climate, the annual precipitation increases by 20~40%. This tendency also holds true in winter although precipitation in the northern region of the model domain decreases in summer. The reduction of the summertime precipitation to the north seems to be attributed to a foehn phenomenon. Next, simulations for the present and future climate over Peninsular Malaysia were conducted using NHRCM with 2-km grid spacing. The simulations reproduce two peaks of monthly precipitation in April and November over the western half of Peninsular Malaysia and a peak in December over the eastern half. In terms of future changes in precipitation, the results show a 20~30% increase over the western and southern domain in winter and a 25~40% increase over the western domain in summer. In fall, precipitation increases by 30~40%, whereas does not change appreciably in spring. Finally, simulations for the present and future climate over Indonesia were performed using NHRCM with 5-km grid spacing. Ten years of simulations out of 20 years, for each present and future climate, have so far been finished. Preliminary results show that reproduced seasonal precipitation is consistent with that derived from a gridded dataset based on observations. In the future climate, shapes of probability distribution functions imply that the magnitude of the variance, in addition to the mean, in seasonal precipitation increases in winter.

2) International comparison of climate change projection

 The simulation of the future climate was completed by using 20-km grid spacing AGCM in order to participate in international project to compare the results of high-resolution global models (HighResMIP). Downscaling experiments from ERA-Interim and AGCM for the future climate were completed by using 20-km grid spacing NHRCM over East Asia region in order to participate in Coordinated Regional Climate Downscaling Experiment-East Asia (CORDEX-EA).

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